CASESTUDY ケーススタディ
商標

取引の実情

ご相談例

当社は頭皮用育毛剤に「木林森」との商標を付して商品を販売しておりましたが、登録商標「大森林」を指定商品「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」として登録している別の会社から、商標権侵害であるとして商品の販売停止の通知書が送付されてきました。この場合どのように対応すればいいでしょうか。

松本の解説

侵害に当たる可能性がありますので、いったん商品の販売を停止するか等は別途考慮するとしても、通知書を送付してきた会社と和解交渉するのが望ましいと思います。

過去の判例①

商標の類否の判断に取引の実情を考慮すべきである(大森林事件)。

最高裁は、同様の事案において、「綿密に観察する限りでは外観、観念、称呼において個別的には類似しない商標であっても、具体的な取引状況いかんによっては類似する場合があり、したがって、外観、観念、称呼についての総合的な類似性の有無も、具体的な取引状況によって異なってくる場合もあることに思いを致すべきである。」、「原審は、観念による類否について説示するに当たり、本件商標及び被上告人標章が付されている頭皮用育毛剤等の需要者は育毛、増毛を強く望む男性であるところ、かかる需要者は当該商品に付された標章に深い関心を抱き、注意深く商品を選択するものと推認されるなどとしているのであるが、必ずしも右のような需要者ばかりであるとは断定できないことは経験則に照らして明らかである」、「原審は……被上告人商品が訪問販売によっているのかあるいは店頭販売によっているのか、後者であるとしてその展示態様はいかなるものであるのかなどの取引の状況についての具体的な認定のないままに、本件商標と被上告人標章との間の類否を認定判断したものであって、原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の解釈適用の誤りないしは理由不備の違法があるというべきである。」と判示し、事件を原審に差し戻した(最三小判平成4年9月22日集民165号407頁〔大森林事件〕)。

弁護士コメント

商標の類否は、いわゆる外観、称呼、観念の三要素に着目しこれを比較するが、それのみではなく、商品の取引の実情を明らかにしうる限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきであるという判例の立場を明らかにしたものであり、本件のケースのようにいわゆる三要素を細かく検討する場合にはどの点でも類似しないように見れるものでも、取引の実情により類似するとすべきものがあることがわかる。

過去の判例②

商標の類否の判断に取引の実情を考慮することを明らかにした事例(しょうざん事件)

最高裁は、糸一般を指定商品とし「しようざん」との称呼をもつ商標と硝子繊維糸のみを指定商品とし「ひようざん」との称呼をもつ商標の類否が問題となった事案において、「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」、「商標の外観、観念または称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、従って、右三点のうちその一において類似するものでも、他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって、なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではない。」(最三小判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁〔氷山事件〕)との判示をした。

弁護士コメント

最高裁は、商標の類否は商品出所混同のおそれを基準にするべきことを鮮明にし、商標の外観、観念又は称呼の類似は、その商標を使用した商品について出所混同のおそれを推認させる一応の基準にすぎず、その判断の際には、明らかにし得る限り、具体的な取引の実情に基づいて判断すべきこととなった。

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